★「シリーズ/優績者の今」

 過去に紹介した優績者の現在の活動と考え方を紹介する「シリーズ・優績者の今」。今回はソニー生命の杉山栄作さん(シニア・ライフプランナー)を採り上げる。杉山さんは大好評だった連載コラム「保険営業マンにできること」の筆者であり、そのほかにも・カウンセラー資格を持ち、広く門戸を開放して勉強会を開いていること、・新契約を追わずに、既契約者の満足度を上げることに比重を置いた〈既顧客マーケティング〉に取り組んでいること等の記事でたびたび登場している。この春には難関のコーチング資格(CPCC)も取得するなど、ある意味でライフプランナーの一つの理想像を示し続ける存在と言える。

(津田)

前編(2004年6月18日)

──今春にコーチングの難関資格、CPCC資格
 (Certified ProfessionalCo-ActiveCoach)を獲得されたとか。どんな資格なのですか。

杉山 CPCCとは、世界屈指のコーチ養成機関であるCTIが独自に認定するコーチの資格です。コーチングにもいろいろな団体がありますが、CTIの資格コースは正式に国際コーチ連盟(ICF)から認可を得ているプログラムです。

──取得するのは、大変なのでしょうね。

杉山 大変でした。詳細はCTIジャパンのホームページをご覧いただければと思いますが、コーチとして常に5人以上のクライアントがいることや、計100時間のコーチングを実施することなどが必要になります。いずれにせよ、生半可な気持ちでは取得できない資格です。

──多忙な仕事以外に、よくそんな時間をとりましたね。

杉山 ねえ(笑)。

──それ以外にも、昨年4月から海外研修に行っていたでしょう? 何度、渡米したんですか。

杉山 CTIのリーダーシッププログラムを受けるために、昨年12月までに4回行
きました。正味1ヵ月くらいです。

──リーダーシッププログラムとは?

杉山 社会をより良い方向に変革していくリーダーを育てるプログラムです。また、リーダーシッププログラムでは、自分の人生をかけたプロジェクト、つまり「自分の働きかけで世の中にどんな良い変化を起こしていきたいか」という問いを投げかけられて、プログラム終了までにその思いを形にしていきます。そこに参加することで、自分のプロジェクトを作り上げる意味もありました。

──どんなプロジェクトができたのですか。

杉山 これは以前から言っていることですが、保険業界の変革というか、一般のお客さまから愛される業界にするというプロジェクトです。

──具体的には、どこから始めていきますか。

杉山 まず、一つには「モデリング」です。例えば、「保険をどう売るか?」ではなく、「ライフプランナーとして、どうあるべきか?」の姿を提示し続けることです。私は、業界を変革する鍵はそれに尽きると思っています。

──杉山さんは、どうあろうと?

杉山 一言で言えば、現在ご加入いただいているお客さまを、ただただ大事にすること。保全をすることですね。そうすることによって、自分からセールスをしなくても、「保険はあなたから入りたい」とおっしゃってくださる方が後を絶たない状況を実現するためにはどうすればいいのか、をずっと考えてきました。

──その付加価値の一つが、お客さんに対して精神的な支援をしていくためのカウンセリング資格の取得であったり、お客さんの発展を支援していくコーチング資格であったりするわけですね。CPCC資格は日本ではまだ30人足らずだとか。カウンセラー資格と両方持っているライフプランナーは世界で杉山さんだけでしょう。とても頼もしい担当者だと思います。

杉山 もちろん、お客さまに理解していただくこともそうですが、自分が所属している支社の同僚に対しても、自分の姿勢を提示し続けたいと思っているんです。実際、今は半年に一度ほど、私が主催するコーチングのワークショップを同僚が受けてくれていて、「どう売るかではなく、どうあるか」という考え方を各人が作っています。それは私から学ぶというより、ワークショップを通じて自分の中にもともとあった答えを見つけているわけです。

──以前、カウンセリングを学び始めた理由として「保険金をお届けするだけでなく、残されたご家族の精神的なケアも支援したい」と話していましたね。
さらにコーチングを始めた理由は?

杉山 最初は、カウンセリングとどこが違うのか確かめようとしたのがきっかけです。カウンセリングというと、イメージが重かったり、何か宗教的に見られたりすることが多いんですが、コーチングはカラッと明るい風に乗ってブームになっているところがありました。そこで、一体どんなものか覗いてみよう、と。

──カウンセリングを修得した効果にSは、精神的なケアだけではなく、保険設計のための精度の高いヒアリングができるようになった点がありましたね。
コーチングに関してはどうですか。

杉山 一つには「傾聴のスキル」の向上があります。それはカウンセリングでも学び、これまで自分でも意識してきましたが、コーチングを突き詰めることで、より深いレベルの傾聴ができるようになったと感じています。コーチングの場面では、相手が口に出していることが実は100%本音ではないことがよくあります。例えば、「新しい人生にチャレンジしたい」と話す一方で、「大きな変化を起こしたくない」という声が聞こえてきたりします。

──直感が研ぎ澄まされていく感じですか。

杉山 言葉にすると変に思われるかもしれませんが、いろいろなものが見えてくるようになりました。
 相手の表面的な言葉や仕草だけに意識を向けるのではなく、その場の全てを読み取るような……、もっと言えば、自分のコア(核)につなげるというか、地に足をつけて心から聴くことによって、本当に相手の話を聴ける状態を作れるようになりました。聴いた内容を自分の頭で考えてしまうと、先入観や自分の思い込みが邪魔をしてしまい、大事なことを聞き逃してしまうことがあるんですよね。

──ここ数年の杉山さんの変化を見れば、それも何となくわかります。端から見ていても、「この人は正確に自分の話を理解し、受け止めてくれる」という安心感がさらに増したように思いますよ。そういえば去年の4月からは手話も習っていましたね。カウンセリングにしても、コーチングにしても、そうしたことの全てが自然に自分の人生や仕事につながっているように見えますが。

杉山 全てが業界を変えるためにやっているわけではないし、大上段に構えて社会貢献を語るつもりもありませんが、手話に関して言えば、それを学ぶことで今までよりも自分の表情が豊かになり、また相手の表情を深く読み取れるようになったという思わぬ収穫もありました。自分が興味のあることがお客さまの役に立てることでもあり、それが結果的に社会貢献にもつながっていることもあるかもしれません。

──それだけ時間を割くと、本業と両立させるのは大変でしょう?

杉山 そういえば、先日、中学生の長女から、「お父さんの本業は何なの?」と言われました(笑)。「もちろん保険のセールスマンだよ」と答えると、「そうだよね。でも、ちっとも保険を売りに行っていないじゃない。けっこう家にいるし、家にいる時は電話ばかりして、コーチングやカウンセリングのことばかりやっている。うちの家計は何によって支えられているの」と鋭い指摘をしてくる(笑)。そこで、なぜコーチングやカウンセリングをしているかをじっくり話したら、「そうだったんだぁ。お父さんの仕事は凄いよ」と言ってくれたんです。とても嬉しかったですね。

──ご家族も不思議がるのだから、同僚だって不思議なのでは?

杉山 そうでしょうね。ただ、これはリップサービスだと思うんですが、先日、うちのマネージャーがミーティングの中で、「支社の中で、あなたはどういうライフプランナーになりたいか、とヒアリングすると、皆が杉山栄作と答える」と言ってくれたんです。
 たぶん同僚からは自然体に見えるんでしょうね。一般の方からも「保険の仕事は大変でしょう?」とよく言われますが、自分ではそれほど大変だと思ったことはないし、切迫感もありません。本来は楽しい仕事じゃないですか。社会的に意義のある仕事だし、「こんないい仕事はない。本当にいい会社に入った」という転職して以来持ち続けている感想は、ますます強くなっています。

後編(2004年6月25日)


──モデリングという意味では、ライフプランナーのあり方を考えた場合に、一方で、財務コンサルタント的に付加価値を高める方向があります。杉山さんも、もちろん勉強はしているでしょうが、敢えて知識武装を前面に出していないのは興味深い。

杉山 皆と同じことをしても楽しくないと思った部分もあるでしょうし、そもそも自分がこの仕事を通じて得たいものは、そうした財務的な専門知識や資格をことさらに武器にして展開していくマーケットではありませんからね。資格や知識はあった方がいいに決まっていますが、私はもっと身近な人たちを幸せにすることに主眼を置いているので、結果的に人間力を高める方向に向かっているのだと思います。

──「ただ保険を販売したいのではなく、人の役に立ちたい。将来この仕事を通じて良い人間関係の輪を作っていきたい」と話していましたが。

杉山 私は、自分が選んだこの仕事に誇りを持っているし、これから業界に入ってくる人たちにも夢を与える存在でありたいと思っています。それは自分の子供たちに対してもそうです。 そして、本当に正しい仕事をし、成果も出ているのであれば、ストレスもないし、こんなにいい仕事はないはず。私はそう思っています。正しくやらない人がいるから、この仕事に不満を感じるお客さまも生まれるわけです。「正しくやったからって上手くいくわけじゃない。きれいごとだよ」という声には、断固としてNOを突きつけたい気持ちです。
 では、私がそのために何をしてきたかというと、4年前からお客さまの保全に全力を尽くし、新規契約を追うことは止めました。「1000人を超えるお客さまがいて、新規活動をしている場合じゃないだろう」という声が自分の中から聞こえてきたからです。
 そこで、「セールスマンが新規活動をせずにフォローだけしていて、仕事として成り立つのか」あるいは、「今いるお客さまに満足していただくことが自然な紹介につながるのか」という問いかけに対して、自分なりの答えを出す試みを始めたわけです。私はそれを、〈既顧客マーケティング〉と呼んでいます。 そのために努力する中で、やはり自分の付加価値を高めるしか方法がないことがわかりました。

──そうした新規契約を追わない仕事に徹することで、一時は数字がかなり落ち込んだようですが、今では完全に復活しましたね(現在は上から2番目のシニア・ライフプランナー)。営業マンがそれをすることは相当な勇気と覚悟が必要だったはず。それを貫き通して結果を出したことは本当に素晴らしいと思う。最上位のエグゼクティブ・ライフプランナーも射程距離に捉えたところにいますが。

杉山 おかげさまで……。かなり遠回りしましたが、それは必要な遠回りだったと思っています。単に成績を上げたり、エグゼクティブになることが自分の目的ではない以上、自分のため、会社のために、きちんとお客さまのフォローをできる仕組みを作ったうえでそこに到達したいと考えていました。
 私は、数千人のお客さまを抱えていても、保全をしっかりやれている成功例を会社と一緒に作っていきたい。まだキャリアの浅い人が頑張っていく中で、安心してお客さまを増やしていけるように地ならしをしてあげたいんです。

──これまでの話だと、ふだんから楽な仕事をしているような誤解を与えかねないので(笑)、保全だけして成果を挙げるためには、日頃からどれだけ細やかなフォローと努力が必要かをお聴きしたい。普段は、どんな営業活動をしているんですか。

杉山 お客さまからの保障診断にお答えしたり、商品に関するご案内メールを送ったり、といったことです。メールのやり取りは、ものすごい数になると思います。あとは、HPでの情報提供です。
 そのほか、お客さま全員に、3年前からバースーデーカードを毎日5〜10通書いてお送りしています。こうしたカードは、そのお客さまとの個別の関係を記した文面になりますから、一人ひとりの方の情報を確認し整理するには良い機会なんです。お客さまの中には、「これだけ既契約者がいると、私のことは覚えていないでしょう?」とおっしゃる方がいるんですが、忘れるわけがありません。
 これは連載にも書かせてもらいましたが、そのお客さまの顔を思い浮かべてもそこに書く一言が出て来ない時は、それは「早くお客さまに会いに行け」というサインだと思っています。

    ◆
 *ちなみに、杉山さんが実践している〈既顧客マーケティング〉を成功させるためには、緻密な顧客管理が欠かせない。「どれだけタイムリーに情報提供ができるか」そして「小さな満足を積み重ねること」が勝負になるからだ。
 例えば、杉山さんはまだ顧客が少なかった頃から、顧客一人ひとりに関する基本的なデータ、接触履歴のほか、面談や電話、メールでやり取りした内容のうち「大事だと思われる部分」、「次回話す際に必ず覚えておくべき部分」などを、厳重な管理のもとにデータベース化している。
    ◆

──保全業務への取り組みに関して言えば、会社(他人)に任せていいことと自分でやらなければいけないことをきちんと分けることで、お客さんにとって、より満足感のある仕事を目指していましたね。 例えば、入院給付金の手続き書類などはカスタマーセンターから送ってもらい、自らは良いタイミングを見て直接お見舞いに通うことに時間を使う、といったことでした。
 そうした役割分担も会社と上手く連携することで、軌道に乗ってきたようですが、今後、保全について新しい展開を考えていますか。

杉山 新しい展開というよりも、今していることをこのまま続けることです。私が考えるライフプランナーのあり方がどんな成果を生み出して行くのかを見て行きたいと思っています。 また、これは先に申し上げた私のプロジェクトでもありますが、カウンセリングやコーチングの資格を取得する営業マンが100人、1000人と増えていった時に、この保険業界がどんな変化を遂げて行くのかを想像しただけでわくわくします。

──現在の課題を挙げるとすると?

杉山 まずは、自分の健康管理ですね。お客さまのためにいくら付加価値を高めても、自分が倒れてしまったら意味がない。私はまだ39歳ですが、最近、「あなたに任せれば安心できるのはよくわかりました。でも、あなたがいなくなってしまったら、どうなるのか心配だ」とよく言われますから。
 そして、そのための仕組み作りも、今、会社に投げかけているテーマです。 一人のお客さまを複数のライフプランナーがチームとして担当する仕組みを作れないかと、勝手に思っているんです。事前に、お客さまに担当チームのメンバーをご案内しておくシステムです。自分の周りでは、すでに実験的に始めているところです。


       (津田)